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イベント情報(概要)
Otakon Vegasは北アメリカ最大のアニメと東アジア文化の祭典であるOtakonの運営メンバーによる新しいイベントです。
アメリカ東海岸で開催されるOtakonから大陸の反対側、西海岸付近のラス・ベガスを舞台に通常のOtakonにはない企画も展開する独自色の強いイベントにどうぞお越し下さい。
訪問記
Otakon Vegas訪問記 (2017年1月13~15日)
ラスベガスといえば全米最大の歓楽街として有名な街だ。ここで全米最大級のアニメイベント「オタコン」が派生イベント「オタコン・ベガス」を設立した2014年から今年で3年目だ。
オタコン本体は毎年8月に東海岸北部(1999年から2016年まではメリーランド州ボルチモア、2017年からはワシントンDCで開催)で開催される総合アニメコンベンションで近年3万人前後が参加する全米屈指のイベントの一つだ。打って変わってオタコン・ベガスは遠く離れた西部ネバダ州ラスベガスで開催される約3千人が参加するやや小ぶりなイベントだが、開催場所の特殊性とオタコンの実験の場として知られている。オタコン本体では楽しめないようなアットホームなイベントであると聞き及んで今回参加させて頂いた。
開催場所はラスベガス・ストリップと称される中央道路の沿いのカジノホテル「プラネット・ハリウッド」だ。このホテルの会議室やボールルームを活用したイベントだが、小規模イベントには珍しく多くの個人出展者向けのスペースが用意されている。これに加えて企業スペースであるディラーズ・ルームやパネル・ディスカッションが行われる会場はなんとホテルのカジノルームのすぐ上に位置しており、アニメイベントに参加してそのままカジノが楽しめるという非常に珍しいイベントだ。
週末の三日間を活用して開催されるイベントだが、街中は普段から観光客と大道芸人が歩き回っているのでオタコン・ベガスのコスプレイヤーが混じっていてもまったく違和感ない。アメリカのほとんどの自治体では「酒類の運搬は良いが、街中に開封されたビン・缶から飲酒は禁止」となっている。しかしラスベガスでは日本と同じようにアルコールを飲みながら往来を行き交いできる。ラスベガスでの自由をそのまま違う街に持ち込まないように気をつけよう。
金曜日での開会式ではパラパラと和太鼓の演奏が披露された。小規模イベントながらも北米のアニメコンベンションでは定番の催し物はしっかりと抑えられている。即ち、開会式と閉会式、展示即売会スペース、コスプレ、招聘された業界関係者による講演会や質疑応答、ファン自身が開催するワークショップ、コンサートやダンスなどなどだ。
一般参加者3000人前後に対して用意されたサークルスペースは80前後であった。これはアメリカの主だったイベントに比べると非常に多い比率である。北米の他のイベントと同じように同人誌よりはピンナップ、アクセサリーなどのグッズ販売が旺盛であった。
ブース出展していたイベントは六つ。すべてにIOEAブックレットを渡した。
ディラーズ・ルームはこの手のイベントとしては平均的な大きさで約40卓ほどあった。日本のアニメ・マンガのフィギュアやプラモデルなどのグッズや書籍・DVD、並びにTシャツやコスプレグッズの販売が多い。北米のアニメイベントではお互いのイベントで出展して広報活動することは珍しくない。オタコン・ベガスでは他のイベントが六つほど参加しており、それらはすべてディラーズ・ルームに配置されていた。
初日である金曜日コスプレイヤーは少なめだったが、土曜日に劇的に増えた。これは恐らく金曜日はホテルへの移動だけで忙しくて、本格的なコスプレは土曜日からという人が多かったと推察される。北米の他のイベントに比べるとコスプレ率がかなり高めだったのが際立っていた。
話は前後するが、オタコン・ベガスは比較的小さいイベントであるにも関わらずステージ設備が充実していた。これは日本からのアーチストを招聘してコンサートを行う都合によるものであろう。今回はJAMプロジェクトのきただにひろしさんが参加されていた。
このほかにもアニメ監督の今川泰宏さんや北米版吹替で活躍する英語声優が四人、並びにオタコン・ベガスの目玉である相撲エキシビションで試合に臨む元力士が二人。また参加者をダンスで盛り上げるためにDJが三人も参加しており、そのうち一人は日本人であった。
北米のイベントよろしく、オタコン・ベガスもまた不夜城のごとく夜遅くまで参加者が交流を満喫していた。参加者は全員首から参加証を提げているので一目瞭然である。この参加証は未成年者か否かを確認する手段ともなっており、未成年者が深夜カジノへと迷い込むのを防ぐ役目も果たしていた。
アニメイベントであるにもかかわらずオタコン・ベガスでは相撲のエキシビション試合はかなり人気である。その理由はファンが日本のアニメ・マンガのファンとなると同時に日本の文化そのものに興味を抱くようになっているからである。アニメ・マンガを単なる娯楽として楽しんでいる人間はもはやアメリカでは珍しくない。わざわざアニメイベントに参加しているオタクはただ漫然と消費するだけではなく、よりディープにその知的好奇心を満足させたいのであろうとイベント主催者からも分析がある。
今後、小さなイベントでも日本の文化自体についての出し物は増えると予想される。その理由は簡単で、アニメ・マンガ自体はネットや大型メディア書店、通信販売で入手し楽しむことが容易になったからだ。アニメイベントがこれからもファンの交流の場として廃られないためには色々な変貌を遂げている一面と言えよう。
そんな日本文化を肌感覚で楽しめるイベントがラスベガスで開催されているというのも興味深い。
オタコン・ベガスはまさしく「テーマパークの中で開催されているテーマパーク的アニメコンベンション」であった。規模は小さいかもしれないがもし機会があればこのユニークなイベントをぜひともお勧めする。
筆者:兼光ダニエル真
1972年生まれ、東京出身の翻訳家。IOEA主席広報代表日本の経済学者の父と合衆国ミネソタ州出身の母の間に誕生。ミネソタ大学東アジア学部卒。デビューは1989年だが、英訳翻訳活動は1996年から本格化。マンガ・アニメなどの翻訳を多数手がける。
新劇場版ヱヴァ・龍の歯医者の他、ブラックラグーンや宇宙戦艦ヤマト2199の翻訳・監修・制作にも参加。
90年代から2000年代にかけて、当時立ち上がった初期アメリカアニメイベントの多くに参加した。